薬剤師の日々研鑽

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アルコール(飲酒)と血糖値

飲酒によって血糖値はどうなるのか、生化学の観点から捉え直します。糖尿病にも密接に関わってきます。


【目次】

アルコールの代謝

アルコールは、10%は呼気中に排泄され、残りの90%は肝臓で分解されます。

高校化学でもあったように、
アルコール→アセトアルデヒド→酢酸
の順に酸化されて分解されていきます。
この酸化に関与するのが、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)です。アルコールを脱水素する酵素は、そのままアルコールデヒドロゲナーゼアセトアルデヒドを脱水素する酵素アルデヒドヒドロゲナーゼ(他のアルデヒドも分解するため、アセトは省略)。

水素を引っこ抜くため、引っこ抜かれた水素を受け取る物質が必要となります(補酵素)。それがニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD)。NADが水素を受け取ってNADHになります(還元)。

以上のことから、アルコールを分解するにはNADがNADHに還元されることが必要です。

糖新生との関わり

一方で、NAD糖新生にも関わってきます。
糖新生は、体内の乳酸やアミノ酸などからグルコースを作り出して血糖値を上昇させる機構です。

その途中過程で、
リンゴ酸→オキサロ酢酸
乳酸→ピルビン酸
の反応にNADが必要となります。


アルコールを多量に摂取すると、その分解のために多量のNADが消費されます。そうすると糖新生に必要なNADが賄えないために糖新生の反応が抑制されます。そのため空腹時に多量飲酒すると、グルコースが供給されずに低血糖のリスクが高まります。

糖尿病治療で、インスリンやインスリン分泌促進薬を使用している方では、その作用により血液中のグルコース濃度は下がります。そこに多量飲酒が加わるとグルコース供給が低下するために低血糖リスクが高くなります。

どの程度の量なら低血糖になりにくいのか?

これに関する文献を見つけました。
Hirst JA, et al. Diabet Med. 2017.
www.ncbi.nlm.nih.gov


2型糖尿病患者が16〜80gのアルコールを摂取した0.5時間後、2時間後、4時間後、24時間後の血糖値は、飲まなかった人と差がなかった。

2型糖尿病患者が1日あたり11〜18gのアルコール摂取を4〜104週間継続しても、血糖値とHbA1cの項目において、飲まなかった人との差がなかった。


ちなみに、アルコールを20gとかで表してますが、飲酒量と度数と密度から計算されるものです。
例えばビール
500ml(飲酒量ml)×5%(度数)×0.8(質量g/体積ml)
=20g

このデータは2型糖尿病のみに該当するデータで、日本人対象ではないので、体格やアルコールデヒドロゲナーゼアルデヒドヒドロゲナーゼ活性に違いが出てくるため、そのまま応用することはできなさそうですが、出てくる数字以上の飲酒では上記のメカニズムから低血糖リスクが高まりそうです。