薬剤師の日々研鑽

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C型肝炎ウイルスと直接作用型抗ウイルス薬の作用機序

分子生物学の観点からC型肝炎ウイルスを捉えなおしてみました。


【目次】

RNA1本鎖のプラス鎖・マイナス鎖

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一本鎖RNAウイルスには、mRNAと同様に5'→3'末端方向に遺伝子がコードされているプラス鎖、
逆に3'→5'末端方向にコードされているマイナス鎖がある。


リボソームは5’→3’の方向へ翻訳を進行させるため、同じく5’→3’へタンパク質がコードされているプラス鎖ならそのままそれがmRNA として翻訳が進行する。
他方、マイナス鎖では3’→5’方向にタンパク質がコードされているために、リボソームではタンパク質が翻訳されない。

そのため、RNAウイルスはRNA依存性RNAポリメラーゼによって、マイナス鎖を転写することでプラス鎖を合成する。
そうすれば翻訳が進行し、ウイルスタンパク質が合成できるようになる。


C型肝炎ウイルスHCVでは、ゲノムRNA(プラス鎖)
→mRNAとして使ってRNA依存性RNAポリメラーゼを翻訳
→元のゲノムのプラス鎖をRNA依存性RNAポリメラーゼでマイナス鎖を転写→これを元にしてプラス鎖であるゲノムを複製している。


ここまでわかるとRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害すればRNAウイルスの増殖を抑制できることがより理解しやすい。
事実、少し前まで主力として使われていたC型肝炎治療薬のリバビリンは、元々インフルエンザウイルスの治療薬として開発されていた。
(インフルエンザもRNAウイルス。)

しかしリバビリンはグアニン類似構造を持ち、核酸合成阻害作用をもつため貧血などの副作用の方が重篤なためにインフルエンザには使用されない。ちなみに、リファンピシンはDNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、結核菌などの細菌の転写を阻害する。


ちなみに、抗インフルエンザ薬のファビピラビルも、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害作用を持つが、インフルエンザは変異が起こりやすく耐性が生じやすいために、新型インフルエンザのパンデミックに備えて使用を制限されている。
エボラウイルスRNAウイルスであるため、エボラ出血熱にも効能を持つ。

HCVの生活環

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薬効薬理(ダクルインザ)|C型肝炎 製品情報 ダクルインザ・スンベプラ|肝炎.jp 肝炎の情報専門サイトより引用

膜タンパク質で宿主細胞へ吸着し、エンドサイトーシスにて侵入。脱核して、プラス鎖であるゲノムRNAが宿主細胞質へ放出される。
ウイルスゲノムRNAから、コアやエンベロープなどの構造タンパク質(Core、E1、E2)と、非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5B)を翻訳する。翻訳されたタンパク質は繋がっており、このままではウイルス粒子に組み立てられないため、プロテアーゼ(NS3/4A)によって構造タンパク質だけを切り取ってウイルス粒子を組み立てていく。
切り出されたNS5AはRNA複製を開始するための複合体の一員であり、NS5BはRNA依存性RNAポリメラーゼ。ウイルスゲノムはNS5A、NS5Bによって複製される。ゲノムと構造タンパク質は小胞体の中で組み立てられ、ゴルジ体でエンベロープに膜タンパク質の糖鎖修飾が行われ、細胞外へ出芽する。

≪NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬≫
テラプレビル
シメプレビル
アスナプレビル
バニプレビル
パリタプレビル
グラゾプレビル


≪NS5A複製複合体阻害薬≫
ダクラタスビル
レジパスビル
オムビタスビル
エルバスビル

≪NS5Bポリメラーゼ阻害薬≫
ベクラブビル
ソホスブビル