薬剤師の日々研鑽

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医学部へ学士編入した薬剤師が基礎的な内容と薬の関連について書いています。内容に関しては最新の情報を参照ください。

ロキソニンと授乳 どう判断するのか

ロキソニンと授乳

 

 

授乳中の方が歯痛や頭痛、風邪などでの発熱など解熱鎮痛薬であるロキソニンを服用されることがあると思います。現代はネットで検索すれば薬の添付文書が見れる時代ですので検索すると、

下の画像のように

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                             ロキソニン錠60mg 添付文書より引用

授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること との記載が出てきます。

これを見た方は「この薬飲んで大丈夫?」と不安になってしまうことと思います。

 

本当にそうなのか薬学的に検討してみました。

結論から言うと、問題ないと思われます。

 

この先は医療関係者向けにその科学的根拠を記載していきます。 

 

【目次】

 

 

 物理化学的性質から

薬剤は、全体の流れとしては母体血漿⇒母乳を産生する腺房細胞⇒母乳の順に移行していきます。

腺房細胞同士は密着結合しており、受動拡散に従って細胞を介して移行します。

受動拡散のため、薬剤の移行しやすさに関わる因子は以下の通りです。

 

分子量

分子量は304.31。分子量200以下の薬剤が細胞膜の細孔を通過しやすいため、移行しづらい性質を持つ。

 

脂溶性か水溶性(1-オクタノール/水分配係数)

脂溶性か水溶性かを表す指標である1-オクタノール/水分配係数は0.82であり、1以下のため水溶性。細胞膜を通過しやすいのは脂溶性であるため、これも移行しづらい。

 

塩基性か酸性か(pKa)

pKaは分子型とイオン型の割合が等しくなる時のpHを指す。4.2の酸性薬物であり、pH7.4の血漿中ではpKa<pHとなっており、分子型の割合が少ない。分子型の方が細胞膜の通過性がいいため、移行しづらい。

 

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また、母乳のpHは6.8と弱酸性であるため弱塩基性の薬物が母乳へ溶けやすい、この観点からも移行しづらい。

 

半減期

半減期についてだが、ロキソニンの成分であるロキソプロフェンは体内で活性化して作用を発揮するプロドラッグであり、活性代謝物(trans-OH体)が存在する。trans-OH体の半減期も考慮すべきと考える。ロキソプロフェンおよびtrans-OH体の半減期は1.22時間、半減期が長いほど体内へ蓄積しやすく、その分母乳への移行率も高くなる。活性代謝物ともに半減期は短く、6時間ほどで体内から消失し、蓄積性もないため、移行しにくいと考えられる。

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 1日3回で投与間隔が6時間だとすると、投与間隔τ/半減期1.22時間=4.9で蓄積率1未満であり、定常状態には達しない(ロキソプロフェンが1-コンパートメントモデルと仮定した)。

 

タンパク結合率

タンパク結合率はロキソプロフェンが97%、trans-OH体が92.8%と非常に高い。血中のタンパク質と結合していない薬物が組織へ移行しやすいので、腺房細胞へも移行しにくい可能性が高い。

 

以上、ロキソプロフェンおよびその活性代謝物の物理化学的特性から検討しましたが、判断基準としては実際の血中濃度も考慮すべきです。

 

 

薬物動態的性質から

相対的乳児摂取量(RID)

インタビューフォームより、60mg投与後1~6時間の乳汁中ロキソプロフェンおよびtrans-OH体濃度は測定限界(0,02μg/mL)以下との記載があるため、ほとんど移行していないことがわかります。

 

また、母体投与量のうち、何%が乳児へ移行したかを表す指標として、相対的乳児摂取量(RID)というものがあります。

RID=母乳中濃度×哺乳量(mg/kg/day)/母親の投与量(mg/kg/day)×100

 

通常は1回1錠で服用すると思いますが、急性上気道炎に関しては120mgを1日2回服用するのでその用量でも検討してみます。

①まずは式の分子から計算していきます。 上述の通りインタビューフォームから母乳中濃度は検出限界以下ですが、仮に検出限界値の0.02μg/mLあったと仮定すると、60mgの投与量でその濃度なので、1日の総投与量の240mgでは0.08μg/mLあると推定されます。乳児の平均哺乳量は150mL/kg/dayなので、乳児の理論的な摂取量は0.08μg/mL×150mL/kg/day=12μg/kg/day=0.012mg/kg/dayとなります。

 

②次に分母を計算します。母親世代の平均体重は50kgなので、母親の投与量は240mg/50kg/day=4.8mg/kg/day。以上①、②をRIDの式へ代入すると

RID=0.012/4.8×100=0.25%

となります。RID<10%未満であれば安全と言われています。1%未満であればまず問題になりません。

母乳中濃度を多めに仮定しても安全に投与できるということになりました。実際には0.02μg/mL以下なので、よりRIDは低くなると予測され、より安全に使えると思われます。

 

ですがごくごく少量は母乳へ移行しているということなので、医師と協議した後の投与がよいと思われます。

 

 

参考文献

ロキソニン錠 添付文書・インタビューフォーム

・「妊娠・授乳と薬」愛知県薬剤師会発行

http://www.achmc.pref.aichi.jp/sector/hoken/information/pdf/drugtaioutebikikaitei%20.pdf

・水野克己、水野紀子「よくわかる母乳育児」へるす出

 ・「母乳とくすりハンドブック」大分県母乳と薬剤研究会 編集

母乳がでないママのサポート☆ミルニック☆

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/40208/1/YANAGISAWA-Teruyuki-01-09-0015.pdf 

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