薬剤師の日々研鑽

薬剤師の日々研鑽

医学部へ学士編入した薬剤師です。基礎的な内容と薬の関連について書いています。内容に関しては最新の情報を参照ください。

12歳未満 コデイン製剤禁忌へ

2019年より、コデインは12歳未満の小児へ投与禁忌となるようです。

【目次】

禁忌となった背景

アメリカでのコデインによる呼吸抑制などのモルヒネ関連中毒死亡例の9割が12歳未満であったため、アメリカ食品医薬品局FDA)が今年の4月に禁忌に設定したことを受けてのもの。

コデインの作用機序・代謝

モルヒネと類似構造を有し、オピオイド受容体に結合する。
鎮痛作用はモルヒネの約 1/6、
精神機能抑制作用、催眠作用及び呼吸抑制作用は約1/4
主にμ受容体に作用し、延髄の咳中枢に直接作用して咳反射を抑制することにより咳を鎮める。


コデインの大半が肝臓でグルクロン酸抱合を受け、およそ10%がCYP2D6によってモルヒネ代謝される。

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リン酸コデイン錠5mg 「ファイザー」 インタビューフォームより引用

CYP2D6の遺伝子多型

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個別化医療実現のための医薬品開発 2008年1月 医薬出版センター発行 より引用
http://www.jpma.or.jp/information/evaluation/publishing_center/pdf/007.pdf

EM: ExtensiveMetabolizer 通常代謝
IM: Intermediate Metabolizer やや活性の低下した中間代謝
PM: Poor Metabolizer 酵素活性は完全に消失している低代謝
UM:Ultrarapid metabolizer 活性の高い変異型

CYP2D6活性が過剰な場合、モルヒネへの変換量が多く、呼吸抑制リスクが高まる。
日本人の場合、活性が過剰なUMはほとんど見られない。

日本での死亡症例もないみたいですが、安全のためということでしょう。
フスコデシロップとか錠剤とかメーカーも卸の方も在庫はいっぱいあるでしょうから、2018年は移行期間ということです。

抗ヒスタミン薬 ビラノアとデザレックスの違い

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【目次】

ヒスタミン薬の分類

開発された歴史

第一世代:作用は強力だが中枢移行性も高い
第二世代:作用はマイルドで中枢移行性は低い

中枢移行性が高いと、覚醒に関与するヒスタミンの作用までもブロックしてしまうために、
眠気の副作用が出やすいほか、集中力や判断力が落ちるインペアード・パフォーマンスも引き起こします。
yakuzaishikensan.hatenablog.com

中枢移行性の指標 H1受容体占拠率

どれくらい中枢に移行しやすいかを測るために、脳内のH1受容体の占拠率で比較しているようです。
H1受容体拮抗作用のあるドキセピンを、11Cで標識して、そこから放出される陽電子をPET(陽電子放射断層撮影)で測定。

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「鎮静性抗ヒスタミン薬ー小児への処方は見直しをー 日経メディカル2008年2月号」より引用


・非鎮静性  :20%未満
・軽度鎮静性 :20~50%
・鎮静性   :50%以上


第一世代の眠気の副作用軽減を目指して第二世代が開発されており(血液脳関門を通過しにくいように、
親水性のカルボキシ基やアミノ基を導入している。)、
第二世代はおおよそ30%未満で収まっている。
例外もあって、第二世代のケトチフェンは第一世代よりも占拠率が高い。


ビラスチン

脳内ヒスタミンH1受容体占拠率への影響(BILA3111/PET)
健康成人(12例)を対象に、本剤20mg、ヒドロキシジンおよびプラセボを二重盲検、クロス オーバーでそれぞれ単回経口投与し、脳内ヒスタミンH1受容体占拠率を検討した結果、 本剤による大脳皮質のヒスタミンH1受容体の占拠は認めなかった。

デザレックスについてはデータなし。


ビラノアとデザレックスの違い

ビラノアは作用発現が早い

tmaxの平均値で見ると、
ビラノア:1時間
デザレックス:1.75時間

わずかにビラノアが早いが、これだけでは何も言えないので、
PubMedで検索すると、直接比較の文献が2報。アブストだけ見たので参考程度に。



Comparison of the efficacy and safety of bilastine 20 mg vs desloratadine 5 mg in seasonal allergic rhinitis patients. - PubMed - NCBI
12~70歳の季節性アレルギー性鼻炎患者を対象に、鼻症状(鼻閉・かゆみ・くしゃみ・鼻漏)と鼻以外の症状(目・耳のかゆみ・涙・赤み)をスコア化して、ビラスチン20mg・デスロラタジン5mg・プラセボで比較。

ビラスチンは、プラセボと比較してベースラインからのスコアを有意に低下させたが、デスロラタジンに対しては有意ではなかった。
ビラスチン(20.6%)、デスロラタジン(19.8%)、プラセボ(18.8%)の治療副作用の発生率は同様であった。


Comparative efficacy of bilastine, desloratadine and rupatadine in the suppression of wheal and flare response induced by intradermal histamine in ... - PubMed - NCBI
18~40歳の健常人24名を対象に、ヒスタミン皮下注による発赤や膨疹に対する抑制効果を、ビラスチン20mg・デスロラタジン5mg・ルパタジン10mgで比較。

〈膨疹に対して〉
ビラスチンは、投与1時間から12時間において、デスロラタジンおよびルパタジンよりも膨疹面積を抑制していた。
6時間で最大の膨疹抑制が起こった(ビラスチン83%、デスロラタジン38%、ルパタジン37%)。
作用発現は、ビラスチンは1時間であり、デスロラタジンおよびルパタジンについては4時間であった。

〈発赤に対して〉
ビラスチンは、投与1〜24時間において、デスロラタジンおよびルパタジンと比較して発赤を抑制しており、30分で作用発現を示した
かゆみの軽減においても、ビラスチンはデスロラタジン(2~12時間)およびルパタジン(2~9時間)より有意に良好であった。
デスロラタジンもルパタジンも、プラセボと比較してかゆみを有意に減少させなかった。



ビラノアは空腹時服用

健康成人男性20例を対象に空腹時または高脂肪食(900kcal以上で、総エネルギーに対する脂質の占める割合が35%以上)後に本剤20mgを単回経口投与したとき、空腹時投与に比べ食後投与時のAUC0-tは1283.53ng・hr/mLから770.59ng・hr/mLへ約40%、Cmaxは 277.86ng/mLから120.18ng/mLへ約60%低下し、tmaxは1.03時間から3.03時間に延長したこと から、本剤の経口投与では食事の影響を受け、バイオアベイラビリティが有意に低下することが 確認された(食後投与の空腹時投与に対する幾何平均値の比の90%CI、AUC0-t : 0.5574~ 0.6839、Cmax : 0.3665~0.5669)。

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ビラノア インタビューフォームより引用

ヒスタミンと競合するために、ヒスチジンに類似した構造をとっている。
弱塩基のベンズイミダゾール骨格と、酸性のカルボキシ基を持つため、酸性薬物と考えられる。

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pkaも2つ出ていることから、アミノ酸のように両性イオンとして働くと推測される。
pkaからすると酸性薬物と思われる。

〈pH分配仮説〉
通常、空腹時には胃内pHは1~2だが、食後だとpHは4~5まで上昇する。
塩基性薬物は、空腹時の低いpHではイオン型薬物の割合が多く、消化管の細胞膜を通って吸収されやすい。
食後ではイオン型の割合が増加し、吸収率が低下してしまう。


しかし、グラフを見ると、pH4~5付近では分配係数は2となっており、脂溶性が高くなっている。
これなら食後の方が吸収がよくなるはずであり、矛盾している。
つまり、pH分配仮説に従っていないため、小腸からの吸収がメインだと考えられる。
・胃からの吸収は、pH分配仮説に従う。
・小腸からの吸収は、非攪拌水層と、膜透過の2段階になっている。


使い勝手

空腹時のタイミングを守れるのであればビラノアがいち早く症状を抑制してくれる。
併用薬があって守れそうにないならデザレックスが無難。


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薬剤師の勉強 スキルアップに使える書籍

薬剤師として働きだしたら独学で知識を蓄えていかなければなりません。そこで疾患や薬物動態を学ぶ上で役立つ書籍をご紹介します。

【目次】

病態を学ぶ

薬理学は病態生理学と密接に関係していますよね。禁忌などもそうです。

改訂総合2版 疾患別設問式 薬剤師に必要な患者ケアの知識

高血圧や脂質異常症気管支喘息などの重要かつコモンディジーズを取り上げ、病態・検査値・薬物治療を体系的に学べます。
問題形式なので、何がわかっていて、何がわかっていないかを明確にしやすいので力がつきやすいです。


病気と薬パーフェクトBOOK2012

物凄く分厚いですが、それも当然、薬理学、症候学、解剖学、生理学、病態・薬物治療学まで疾患ごとにまとめた一冊。
上の「患者ケア~」を仕上げた後だとすんなり知識が入りやすいです。
著者一覧も医師・薬剤師の教授陣の名が連なっており凄まじい面々です。エビデンスも豊富に収載されています。

薬物動態を学ぶ

薬剤師ならではの強みを活かすためには薬物動態だと思います。ご紹介するのはいずれも入門編なので簡単に読むことができます。

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学 まちの薬局しごと集

薬局でも使える薬物動態を学べる一冊。大学の薬剤学が苦手な人でもとっつきやすくわかりやすい本です。
実際の症例を例示してくれているので、日常の業務にも活かしやすかったです。


薬物動態を推理する55Question 一歩踏みこんだ疑義照会と服薬指導のために

上の薬局薬物動態学の監修をされていた菅野彊先生の著書。
この本で学ぶことで、ドクターへエビデンスと専門知識を持って処方提案したところ、信頼されて問い合わせが激増しました。

病態と薬物動態に基づいて処方提案

医師である越前宏俊先生も携わっておられるため、臨床現場での実践的な内容が載っています。
どういう根拠をもとに処方提案したかもあるため、自分でも実際にやってみようと思える内容でした。


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糸球体濾過量(GFR)とクレアチニンクリアランス(CLCr)の違い

添付文書で頻繁に見かける糸球体濾過量(GFR:Glomerular filtration rate)やクレアチニンリアランス(CLcr)。
それらの違いや使い分けについてまとめています。
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ろ過・再吸収・分泌

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図のように、排泄される物質は、
糸球体でろ過され
尿細管で再吸収
尿細管で分泌

を受ける。



糸球体濾過量(GFR:Glomerular filtration rate)

単位時間あたり(1分間)に、糸球体からろ過された血漿量のこと。
これはつまり、どれくらいの血漿から薬物を排除できたか=クリアランスを表す。
結局、高校の生物で習った、原尿量と同じもの(原尿=糸球体でろ過された血漿)。



血漿から出ていった物質は尿中に排泄されるのだから、
[血漿中から消失した量]=[尿中へ排泄された量]


つまり、
血漿中濃度(mg/dl)×糸球体を通過した血漿量(ml)
=尿中濃度(mg/dl)×尿量(ml)


ここで、
原尿は糸球体でろ過された血漿のことなので、
ろ過しか受けていない血漿中濃度=原尿中濃度
また、糸球体を通過した血漿量=原尿量より

原尿量(ml)={\displaystyle\frac{尿中濃度(mg/dl)×尿量(ml)}{血漿中濃度(mg/dl)}}


なにかの物質に注目して、その尿中濃度と、尿量、血漿中濃度を測定すれば
原尿量つまり糸球体濾過量が産出できる。


一番糸球体濾過量を反映するのは、ろ過しか受けないイヌリンのクリアランス(Cin)。

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折田義正 イヌリンクリアランス測定法 モダンメディア 53 巻 2 号 2007 33-39 より引用

イヌリンの持続点滴、頻回な採血と採尿、そして拘束時間を考えると、実臨床で気軽に実施できるものではない。

糸球体濾過量を最も高精度に反映するものの、その測定は現実的ではないため他の指標が求められた。

イヌリンクリアランスに近似している指標

イヌリンクリアランスは最も確実に糸球体濾過量を測定できるが、煩雑で時間がかかる。
そのためより簡便で、真の糸球体濾過量を近似できる指標が求められた。

それがクレアチニンリアランスと推定糸球体濾過量(estimated GFR)。

クレアチニンリアランス

代表的なものは、CockcroftとGaultが18歳以上の成人を対象として推定式をつくった、Cockcroft-Gault式。


クレアチニンは、筋肉に含まれるクレアチン代謝物。
内因性であるためイヌリン持続点滴は不要。血清クレアチニンだけ測定すればいいので採血も1回で済み、診療に用いやすくなった。

Cockcroft-Gault式

eCLCr(mL/min)={\displaystyle\frac{(140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性)}{72×血清Cr(mg/dL)
}}
           

◆注意点
・式を見るとわかるように、体重が分子にあるため、肥満の方では腎機能が高く算出されてしまう。

・また、血清クレアチニンと体重が変動がないと仮定して、年齢だけ大きくしていくと、腎機能は1歳で1下がる計算になってしまう。
実際にはそんなに毎年下がっていかないので、高齢者ほど低く計算されてしまう。

クレアチニンはイヌリンと異なり、分泌もわずかに受けているため、20~30%高く算出されてしまう。0.789をかけて補正する必要あり。


推定糸球体濾過量(eGFR)

日本腎臓学会が、日本人の多数の患者のデータを用いて、診断に用いるために作成した推算式。
尿量、ひいては循環血漿量は体表面積に比例するので、小柄な人ではそもそもろ過すべき血漿量つまり糸球体濾過量も少ない。そのため、単位が1.73m^2で補正してある。


eGFR(mL/min/1.73m2)=194×Cr^-1.094×Age^-0.287×0.739(女性)


◆注意点
・投与設計時には体表面積補正を外す。
ここ[研究者・医療関係者の皆さん] ツール - 体表面積、Ccr計算:日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG:Japan Clinical Oncology Group)で体表面積を求めて、eGFR×求めた体表面積/1.73で補正


小柄で筋肉量が少ないような高齢者では高めに算出されてしまう。

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参考文献

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009 日本腎臓学会
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薬剤師が知っておくべき、肝臓の検査値とその意義

薬局だとカルテは見れないために、主な情報源が患者さんになってしまいます。
疾患名も治療方針も患者さんから聞くことはできても、又聞きなので伝言ゲームのように正確性に欠けます。
だからこそ、患者さんの話をよく聞いて、持参してくださった検査値をしっかり見て、薬物治療上の問題がないか確認する必要が高いと思っています。
ここには生理学と生化学が絡んできます。



【目次】

肝臓の役割(生理学)

肝臓の役割をわかっておくと、検査値を理解する上で役に立ちます。
矢印は、肝機能が低下した時に出現する事象。

毒や薬物の分解・代謝

アミノ酸の分解
  ⇒芳香族アミノ酸の蓄積 
アンモニアオルニチン回路
  ⇒高アンモニア血症
薬物代謝(酸化・還元や抱合)
  ⇒薬物血中濃度上昇
ホルモン分解
  ⇒女性ホルモン濃度上昇

ビタミンD(コレカルシフェロール)の活性化
  ⇒低カルシウム血症や骨軟化症
ビリルビンをグルクロン酸抱合して排泄を補助
  ⇒黄疸

栄養素の貯蔵

過剰なグルコースをグリコーゲンとして貯蔵
  ⇒低血糖
過剰な脂肪酸中性脂肪として貯蔵
  ⇒脂肪肝

食事ができない場合にはそれらを分解してエネルギーを取り出します。

物質の合成

凝固因子やアルブミンなどのタンパク質
  ⇒出血傾向や浮腫
コレステロール
  ⇒総コレステロール値低下
胆汁酸
  ⇒脂溶性栄養素の吸収不良


※ちなみに、胆汁酸とコレカルシフェロールの原料はコレステロールです。「コレ」の意味は胆汁。



検査値(生化学・病態)

日常的に検査されて、薬局でもよく目にする項目のみです。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

基準値:13~33U/L
局在:心筋・肝臓・骨格筋・赤血球・腎臓・ミトコンドリアほぼ全身に分布
肝臓含有量:約140(酵素活性U/g湿重量)
半減期:およそ12時間
役割
アスパラギン酸のアミノ基を、TCA回路の構成要素でもあるαーケトグルタル酸へ転移させる。その結果、アスパラギン酸はオキサロ酢酸へ、αーケトグルタル酸はグルタミン酸へ変化する。
逆反応も触媒する。

オルニチン回路との繋がり

バリン・ロイシン・イソロイソンなどの分岐鎖アミノ酸は、骨格筋でも分解されるが、アミノ酸からアミノ基を外すとアンモニアとなって細胞毒性を示してしまう。
その毒性を発揮させないためにアミノ基をαーケトグルタル酸に転移してグルタミン酸に変えている。グルタミン酸は肝臓に運ばれて、ミトコンドリアASTによってアミノ基をオキサロ酢酸に渡してアスパラギン酸へ変える。
そうすることでオルニチン回路に取り込まれてアンモニア尿素へ変化させる。


ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

基準値:8~42U/L
局在:肝臓>腎臓
  ⇒肝特異的
肝臓含有量:約44(酵素活性U/g湿重量)
半減期:およそ50時間
役割
ラニンのアミノ基を、TCA回路の構成要素であるαーケトグルタル酸へ転移させる。その結果、アラニンはピルビン酸へ、αーケトグルタル酸はグルタミン酸へ変化する。


糖新生との関わり

糖新生とは、アミノ酸や乳酸などの材料からグルコースを作る過程。
ラニンをピルビン酸に変化させることで糖新生の経路に乗せている。


LDH(乳酸脱水素酵素

基準値:200~400U/L
局在:LD1とLD2   ⇒心臓、腎臓、赤血球
   LD3とLD4とLD5⇒肝臓、骨格筋
半減期:LD1(79時間)
    LD2(75時間)
    LD3(31時間)
    LD4(15時間)
    LD5(9時間)
役割解糖系の最終段階で、酸素が足りない条件でピルビン酸を乳酸へ酸化する。
   同時にNADをNADHへ還元する。
   逆反応も触媒する。

心筋梗塞や溶血との繋がり

LD1、2は主に心臓に分布し、半減期も長いため心筋梗塞で上昇する。
また、赤血球にも含まれるため溶血でも上昇する。

これらを組み合わせて判断できること

まずはASTとALTの違いを整理
・肝臓への局在 AST<ALT      
・肝臓の含有量 AST>ALT
半減期    AST<ALT

急性肝炎

細胞障害の度合いが大きいため、含有量の多いASTが多く血中に遊離する。
AST/ALTは大きくなる。

慢性肝炎・脂肪肝

細胞障害の度合いは小さいため、半減期の長いALTが多く血中に遊離する。
AST/ALTは小さくなる。

肝硬変

線維化していない正常な細胞が少なくなっているため、AST・ALTとも低下する。
細胞数が少ないために、含有量の少ないALTの血中への遊離も低下する。
AST/ALTは大きくなる。

心筋梗塞や溶血

心臓に局在をもつASTが多く血中に遊離する。
AST/ALTが大きくなる。
併せて、LDHも上昇している。


薬物代謝能の推定

上記の検査値はいずれも細胞からの逸脱酵素で、その細胞の障害度合いを表すものだった。
しかし障害の度合いが必ずしも薬物の代謝能と一致しているわけではない。


慢性肝炎の患者には薬局でも遭遇率が高い。
薬剤師として、どれくらいの代謝能が残っているのか予測できれば、処方の助けになる。


慢性肝炎を引き起こしているC型肝炎ウイルスが病勢が激しい際にはγーグロブリン(抗体)が多く産生されるため、アルブミン/グロブリン比(A/G比)が低下している。

急性肝障害モデルの肝臓では、CYP各分子種間でmRNA発現量の低下率と酵素活性低下率との間に高い相関性を認めたが、慢性肝障害モデルでは必ずしも一致するものではなく、一定の相関関係を見出すことはできなかった。
しかし、CYP各分子種の酵素活性低下率と同時に測定した血液生化学検査値との相関関係を見たところ、急性肝障害モデルでは、血清トランスアミアーゼ活性(AST値)の間に、
また、慢性肝障害モデルでは、血清albumin値の間に高い相関関係を認めた。

真野泰成 肝障害時における薬物投与設計法の開発 
博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査結果の要旨/金
沢大学大学院自然科学研究科, 平成19年3月: 367-371  より引用

ラットのデータではあるが、急性肝障害モデルでは、ASTが高いほど薬物代謝酵素CYPの酵素活性が低くなっている。
一方で、慢性肝障害モデルでは、血中アルブミン濃度が低いほど酵素活性が低くなっている。

※ヒトでは、慢性肝炎ではアルブミン濃度は比較的保たれるため、慢性肝障害モデルをヒトで考えると、肝硬変に相当する。

Child Pugh分類

最近では、添付文書に肝障害の度合いを表すChild Pugh分類に合わせた投与量が記載される薬剤が増えてきました。

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軽度 :5~6
中等度:7~9
重度 :10~15

代謝型か腎排泄型かを見極めて、投与量調節をチェック・提案
yakuzaishikensan.hatenablog.com

肝代謝型と腎排泄型薬剤の判断・指標

薬剤師として知っておくべき、投与される薬剤が肝代謝型なのか腎排泄型なのかの判断。


【目次】

分配係数(脂溶性か水溶性か)

参考程度ですが、薬剤が脂溶性なのか、水溶性なのかでもおおよその判断ができます。
脂溶性が高いと血管壁を容易に通過して細胞内へ入っていきやすい薬剤。脂溶性ビタミンと同じで蓄積しやすいということ。
そこで体はそれを排泄するために肝臓で、ヒドロキシ基などの官能基を導入したり、グルタチオンや硫酸などで抱合して、極性を上げることで体外に排泄しやすくする。



n-オクタノール/水分配係数を参照する。(インタビューフォームに記載。)
シンプルに油/水のどちらに溶けやすいか、性質を表す。
・1より大きいなら脂溶性
・1より小さいなら水溶性

対数logをとった、logPで記載されている場合もある。
その場合には、log関数のグラフを思い出しながら、
分配係数Pが1より大きいならlogPは正の値
分配係数Pが1より小さいならlogPは負の値

ちなみに、核内受容体と結合してCYPなどの薬物代謝酵素を誘導する薬剤は脂溶性傾向にある。

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テグレトール インタビューフォームより引用

※脂溶性であることと、肝代謝型であることはある程度相関しますが、完全に一致はしないので、参考程度に。

尿中未変化体排泄率(排泄での腎臓の寄与の割合)

体循環に入った薬のうち、代謝されずに未変化体のまま尿中に排泄される割合。

尿中未変化体排泄率(fu)=未変化体排泄量/(バイオアベイラビリティ×投与量)

・0.7以上なら腎排泄型
・0.3以下なら肝代謝
中間のものは肝・腎両方が関与

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クラビット錠 添付文書より引用

バイオアベイラビリティを考慮する!

fu=未変化体排泄量/(バイオアベイラビリティ×投与量)

練習のために、上のクラビット錠の添付文書を見ると、
「5.の点滴静注との比較」から、バイオアベイラビリティ=経口AUC/静注AUC=50.86/51.96=0.98とわかる。
「4.排泄」から、尿中未変化体排泄率=500mg×0.8376/500mg×0.98=0.85
0.7以上より、腎排泄型と判断できる。

裏付けとして、「6.腎機能障害患者での体内動態」で、クレアチニンリアランスが20未満では半減期が延び、AUCが増大し、尿中未変化体排泄率が低下している。


活性代謝物を考慮

また、代謝物に活性がある場合、未変化体だけでなくその活性代謝物の尿中未変化体排泄率を考慮する必要があります。
こちらの記事にも書いています。
yakuzaishikensan.hatenablog.com

活性代謝物の量を未変化体の量に足して計算します。
例えば投与量を100%として、尿中に未変化体40%、活性代謝物が30%
バイオアベイラビリティ90%とすると、
fu=(未変化体0.4+活性代謝物0.3)/(1×0.9)=0.78
数値が0.7以上なので腎排泄型と判断できます。

活性代謝物を考慮しなかったらfu=0.44となって、肝腎のハイブリッドと勘違いしてしまいます。

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参考文献

薬物動態を推理する55 Question 一歩踏みこんだ疑義照会と服薬指導のために [ 菅野彊 ]

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多量アルコール(飲酒)で血糖値が低下する

飲酒によって血糖値はどうなるのか、生化学の観点から捉え直します。糖尿病にも密接に関わってきます。


【目次】

アルコールの代謝

アルコールは、10%は呼気中に排泄され、残りの90%は肝臓で分解されます。

高校化学でもあったように、
アルコール→アセトアルデヒド→酢酸
の順に酸化されて分解されていきます。
この酸化に関与するのが、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)です。アルコールを脱水素する酵素は、そのままアルコールデヒドロゲナーゼアセトアルデヒドを脱水素する酵素アルデヒドヒドロゲナーゼ(他のアルデヒドも分解するため、アセトは省略)。

水素を引っこ抜くため、引っこ抜かれた水素を受け取る物質が必要となります(補酵素)。それがニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD)。NADが水素を受け取ってNADHになります(還元)。

以上のことから、アルコールを分解するにはNADがNADHに還元されることが必要です。

糖新生との関わり

一方で、NAD糖新生にも関わってきます。
糖新生は、体内の乳酸やアミノ酸などからグルコースを作り出して血糖値を上昇させる機構です。

その途中過程で、
リンゴ酸→オキサロ酢酸
乳酸→ピルビン酸
の反応にNADが必要となります。


アルコールを多量に摂取すると、その分解のために多量のNADが消費されます。そうすると糖新生に必要なNADが賄えないために糖新生の反応が抑制されます。そのため空腹時に多量飲酒すると、グルコースが供給されずに低血糖のリスクが高まります。

糖尿病治療で、インスリンやインスリン分泌促進薬を使用している方では、その作用により血液中のグルコース濃度は下がります。そこに多量飲酒が加わるとグルコース供給が低下するために低血糖リスクが高くなります。

どの程度の量なら低血糖になりにくいのか?

これに関する文献を見つけました。
Hirst JA, et al. Diabet Med. 2017.
www.ncbi.nlm.nih.gov


2型糖尿病患者が16〜80gのアルコールを摂取した0.5時間後、2時間後、4時間後、24時間後の血糖値は、飲まなかった人と差がなかった。

2型糖尿病患者が1日あたり11〜18gのアルコール摂取を4〜104週間継続しても、血糖値とHbA1cの項目において、飲まなかった人との差がなかった。


ちなみに、アルコールを20gとかで表してますが、飲酒量と度数と密度から計算されるものです。
例えばビール
500ml(飲酒量ml)×5%(度数)×0.8(質量g/体積ml)
=20g

このデータは2型糖尿病のみに該当するデータで、日本人対象ではないので、体格やアルコールデヒドロゲナーゼアルデヒドヒドロゲナーゼ活性に違いが出てくるため、そのまま応用することはできなさそうですが、出てくる数字以上の飲酒では上記のメカニズムから低血糖リスクが高まりそうです。