薬剤師の日々研鑽

薬剤師の日々研鑽

医学部へ学士編入した薬剤師です。基礎的な内容と薬の関連について書いています。内容に関しては最新の情報を参照ください。

細胞接着因子と薬

細胞接着因子

セレクチン:糖鎖をリガンドとして細胞を接着する。白血球表面の糖鎖であるSLXと結合して、白血球のローリング(血管に結合して回転する過程)に関与。

ちなみに、SLXもCA19-9も糖鎖の腫瘍マーカー。つまり癌の浸潤にも関与しており、シメチジン投与によりEセレクチンの発現が低下し、術後再発率低下のデータもある。

 

インテグリン(αLβ2、LFA-1):integrate(統合する)という英語の通り、異なる細胞同士を接着する。結合相手は免疫グロブリンスーパーファミリー(I-CAMなど)。

免疫応答の抗原提示の際にも、MHCクラスⅡ分子以外の共刺激因子として関与している。共刺激因子としては、抗原提示細胞(APC)側のインテグリンリガンドであるCD86、その受容体のT細胞側にあるCD28がある。

抗原提示細胞側のCD40、T細胞側リガンドのCD154(CD40L)。

@樹状細胞はCD86の発現量が多く、抗原提示しやすい。

 

免疫グロブリンスーパーファミリー:I-CAMなどは、インテグリンと結合し、白血球の遊走に関与している。なかでも、CD54はライノウイルスの受容体として感染に関与している。

@エリスロマイシンの長期投与によってI-CAMの発現が低下し、感染リスクが低下する報告あり。

 

免疫調節機構

過剰な免疫反応は炎症を持続させてしまうため、免疫を抑制するための機構も備えている。がん細胞はそれを利用して細胞免疫を逃れている。

CTLA-4(Cytotoxic T-lymphocyte antigen-4):T細胞に発現しており、CD28と類似しているため、APC表面のリガンドCD80(B7-1)や CD86(B7-2)と相互作用して、共刺激を抑制することで、T細胞活性化を抑制する。本来は刺激された後に発現して過度な活性化を抑える役割を担っている。 イピリムマブは抗CTLA4抗体。 

 

PD-L1(Programmed cell-Death Ligand 1):通常では、正常な組織に発現しており自己免疫反応をしないように働いている。がん細胞もこれを発現し、免疫細胞であるT細胞のPD-1と結合して免疫細胞の攻撃を免れている。 ニボルマブは、抗PD-1抗体であり、癌が免疫から逃れるためのチェックポイント・シグナルPD-1を抑制することにより、リンパ球による癌への攻撃を促進する。

アセトアミノフェン(カロナール)の作用機序・肝障害と薬物動態

アセトアミノフェンカロナール)は頻繁に用いられる薬剤ですが、臨床で注意すべきポイントをまとめました。


【目次】

アセトアミノフェンの作用機序

作用機序は、視床下部の体温調節中枢にてCOXを阻害⇒PGE2産生を抑制⇒セットポイントを下げ熱放散を増大させ解熱作用を示す。
視床と大脳皮質の痛覚閾値の上昇させ鎮痛作用を示す。
また、末梢におけるCOX-1阻害作用は極めて弱いため抗炎症作用はほとんどない。

物理化学的性質

f:id:yashiki5296:20170526014604p:plain

アセトアミノフェンは、フェノールにアセチル化されたアミノ基が付いてると見ることができる。フェノールなので酸性薬物。

pKaは9.5
比較のために他の物質のpKaも載せておく。
H2O:15.7
CH3COOH:4.76
HCl:-8.0

酸性薬物であるため、pHが1〜2の胃ではほとんどが分子形であり、胃からも吸収が始まる。

炭水化物が多い食事と一緒に服用すると、複合体を形成して吸収速度が遅くなるため薬効発現が遅れる。

薬物動態から見た有効性

風邪などの疾患で解熱鎮痛剤として用いられるが、用量と薬物動態から有効性をチェック。

癌性疼痛で継続されることもあるが、保険薬局では基本的に頓服として処方されるため、単回投与で検討。
最高血中濃度は、

Cmax=F*Dose/Vd
で表される。F:バイオアベイラビリティ、Dose:投与量、Vd:分布容積
インタビューフォームより、F=90%、Vd=0.96L/kg、有効血中濃度=5~20μg/mL

ここで60kgの患者にカロナール500mgを1錠というよくある処方で計算してみると、
Cmax=0.9*500mg/(0.96L/kg*60kg)=7.81mg/L=7.81μg/mL

有効血中濃度の範囲内であり効果があると思われる。
これは添付文書の用量通りであればほとんど有効濃度域に入る。



肝障害の機序

アセトアミノフェンはCOX-1に対する阻害作用が非常に弱く、そのため胃腸障害や腎障害などの副作用が少ない。一方で、肝障害の副作用の恐れがある。

f:id:yashiki5296:20170124030038p:plain

アセトアミノフェンの90%以上がグルクロン酸抱合、硫酸抱合により代謝され、一部
はCYP2E1等により代謝され、N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)を生成する。通常量ではNAPQIはグルタチオン抱合を受け代謝され、メルカプツール酸やシステインになって排泄される。グルタチオンが不足または枯渇するとNAPQIが蓄積し、肝細胞毒性を示し、肝障害が起こる。


危険因子

アルコール多飲⇒CYP2E1誘導⇒NAPQI増加

アセトアミノフェン過量服用⇒グルクロン酸や硫酸抱合が飽和⇒CYP2E1経路へ流れる⇒NAPQI増加

低栄養⇒グルタチオン構成アミノ酸グルタミン酸システイングリシン)の不足⇒NAPQI増加

肝疾患⇒グルタチオン不足⇒NAPQI増加


肝障害の投与量

成人では、10~15g(150~250mg/kg)のアセトアミノフェンを一度に内服すると肝毒性が起こり、20~25gまたはそれ以上では致命的になる可能性がある。
別の文献では、アセトアミノフェン摂取4時間後の血中濃度が 300μg/mL を越えるとき激しい肝障害を生じるが、120μg/mL 以下ならば生じないとされている。

先ほどのCmaxで検討してみると、血中濃度120μg/mLというのは、体重60kgの人にとっての7680mgとなる。500mg錠でも1度に15錠以上服用しなければ問題ないとされる。


解毒剤

アセトアミノフェン中毒の治療には、N-アセチルシステインを用いる。
抗酸化作用を持ち、またグルタチオンの前駆体であり肝細胞内でグルタチオンへ変換される。
アセトアミノフェン過量服用後8時間以内(毒性のあるNAPQIに代謝されてグルタチオンが枯渇するまで)に投与すると効果的。
静脈注射の製剤は日本にはないため経口投与(ムコフィリン)。
yakuzaishikensan.hatenablog.com


アスピリン喘息

NSAIDsに対する過敏症で、喘息や鼻症状が成人で発症した喘息患者の1割に見られる。鼻茸がある患者に多い。
アスピリンだけに見られる過敏症ではないことに注意!
機序はCOX-1阻害のためアラキドン酸の代謝がLOX経路を介してロイコトリエン(LT)の産生に傾き、LT作用である気道収縮、血管透過性亢進(鼻汁産生)が関与する。
アスピリン喘息既往患者がどうしてもNSAIDsを使用しなければならない場合には、COX-1阻害作用の小さいCOX-2選択的阻害薬かアセトアミノフェンを低用量で用いる。類薬であるためどちらも添付文書上では禁忌になっている。そのままだと疑義が来るので処方箋備考欄に要コメント。


にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

参考文献

カロナール錠インタビューフォーム
・浦部晶夫/島田和幸/川合眞一(2016) 今日の治療薬2016 南江堂
・松澤 忍(2008) 患者とくすりがみえる 薬局薬物動態学 南山堂

鎮痛剤NSAIDsの作用機序と免疫

鎮痛剤は使用頻度が高いですが、どう効くのか、何を知っておくべきなのかまとめてみました。



【目次】

ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の作用機序はご存知の通りシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害によるプロスタグランジン(PG)の産生抑制によるもの。

PGの作用

①発痛作用

PG自体に発痛作用はないが、視床や大脳皮質の痛覚閾値を低下させる。ブラジキニンの発痛を増強する。

②発熱作用

PGE2は体温調節中枢である視床下部でセットポイントを上昇させる。上昇させるために血管を締めて熱放散を抑制。筋肉収縮にて熱産生を行う。

③催炎症作用

PGE2やPGI2はPG受容体⇒Gsタンパク活性化⇒AC活性化⇒cAMP上昇⇒PKA⇒血管平滑筋弛緩⇒血管拡張⇒血管透過性を亢進して炎症を惹起する。
Gタンパク質共役型受容体のゴロはこちら。yakuzaishikensan.hatenablog.com


①と②は中枢作用、③は末梢作用。
これらPGの産生を阻害することでNSAIDsは鎮痛・解熱・抗炎症作用を示す。



アセトアミノフェンは主に中枢のCOXを阻害するため抗炎症作用はない。COX-1阻害作用は弱く中枢作用のみ。


アスピリン(アセチルサリチル酸)は血小板のCOXをアセチル化⇒TXA2産生を抑制して抗血小板作用を有するが、高用量では血管内皮細胞のCOX阻害⇒PGI2産生まで抑制することで抗血小板作用が減弱してしまう(アスピリンジレンマ)。
アセチル化が不可逆的であり、核がない血小板ではタンパク合成が出来ず寿命が終わるまで阻害作用が続く。他のNSAIDsは可逆的なため抗血小板作用は持たない。

免疫との関わり

自然免疫において、マスト細胞やマクロファージ、樹状細胞が体内をパトロールしているが、細菌や異物などの侵入をToll様受容体で感知すると、炎症サイトカインであるTNFαやIL-1やIL-6を産生する。炎症サイトカインはBBBを通過出来ないため、周辺の細胞膜へ作用し、ホスホリパーゼA2を活性化させ、アラキドン酸カスケードを介してPGE2を産生し、視床下部でのセットポイントを上昇させ発熱を引き起こす。

発熱することで免疫細胞の活性化を図り治癒を促進しているため、迂闊な解熱は治療の妨げになる。



Gタンパク質共役型受容体ゴロとシグナル伝達

薬剤師国家試験でも問われる生物の基礎部分で、かつ薬理や薬物治療にも関係してくるGタンパク質共役型受容体。
しかしどのアゴニストがどのGタンパクと共役してるのかなかなか覚えにくいですよね。ゴロを紹介します。
暗記するだけでは今後の国家試験に対応できないので、その下流のシグナル伝達と生理学までざっくりやりましょう。そうすると本番で忘れてしまっても思い出しやすくなります。
イメージによるこじつけの部分もありますがご了承ください…


【目次】

Gタンパク質

Gタンパク質は、α、β、γの3つのサブユニットから構成されてます。
そのうち、Gαタンパク質のみがグアノシン二リン酸(GDP)やグアノシン三リン酸(GTP)と結合できます。

GTPと結合したGαタンパク質は活性型で、GDPと結合したGαタンパク質は不活性型です。

いつまでも活性型でいると過剰な反応が起こってしまうので、Gαタンパク質にはGTPGDPへ分解する能力が備わっています。(GTPase活性)

リガンドが結合するとGDPGTPと交換して活性型となります。活性型となったGαは、Gβγと解離して、次の効果器へシグナルを伝達します。

Gαには、Gαs、Gαi、Gαq、Gαt、Gαolfなどの種類があり、それぞれ作用が異なります。中でも薬に関与するのはGαs、Gαi、Gαqで、国家試験で問われるところです。以下は全てGαタンパク質なのでαを省略します。

【Gsタンパク質共役型受容体】

じーさん ベタベタ エッチに アイツ ダイスキ 兄も グル

じーさん=Gsタンパク
ベタベタ=β1受容体、β2受容体
エッチに=H2受容体
アイツ=PGI2受容体
ダイスキ=D1受容体
兄=A2受容体(アデノシン受容体)
グル=グルカゴン受容体

+@Gsタンパク質共役型受容体のシグナル伝達
じーさん⇒が悪いイメージ
=(ACアデニル酸シクラーゼ
Gsのsはstimulate刺激の意味なので、アデニル酸シクラーゼ活性化
シクラーゼはcyclase(環状にする酵素)なのでそれによりATPがcAMP(サイクリック)つまり環状のAMPへ変換されます。
cAMPはPKAを活性化し、PKAが種々のタンパク質をリン酸化。

心筋では、β1→Gs→AC→cAMP→PKA→細胞膜や筋小胞体のCa2+チャネルリン酸化による開口→細胞質へのCa2+流入増量→心筋収縮力増強


平滑筋では、β2→Gs→AC→cAMP→PKA→ミオシン軽鎖キナーゼリン酸化による活性低下→ミオシン不活性状態→平滑筋弛緩
PKAによりミオシン軽鎖キナーゼがリン酸化され、本来のキナーゼの役割である、ミオシンのリン酸化が行えず、ミオシンとアクチンの滑り運動が起こらないために平滑筋の筋弛緩が起こります。

ちなみに、β刺激薬が低カリウム血症を引き起こす機序は、β刺激→AC→cAMP→PKA→Na+,K+-ATPase活性化⇒カリウム取り込み亢進によるものです。


胃では、PKAがプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)を活性化するため、胃内腔へのプロトン放出が促進されて胃酸分泌が亢進します。


膵臓のα(A)細胞では、グルカゴンやアドレナリン・ノルアドレナリンが反応して、PKA活性化→グリコーゲンホスホリラーゼキナーゼ活性化→グリコーゲンホスホリラーゼ活性化→グリコーゲンよりグルコース一リン酸が切り出される→肝臓でグルコースー6ホスファターゼでグルコースへ変換⇒血糖値上昇。

【Giタンパク質共役型受容体】

あい は まだまだ(MαD×2) がんばるべー

アイ=Giタンパク
まだまだ=M2受容体、α2受容体、D2受容体
がんばるべー=GABAB受容体

+@Giタンパク質共役型受容体のシグナル伝達
Giのiはinhibit(抑制)の意味。アデニル酸シクラーゼを抑制するためGsタンパクのシグナル伝達とは逆の作用を持ちます。

Giタンパクは少し特殊で、おおよそ中枢神経に発現しているものと考えた方がわかりやすいです。
例えばα2受容体は、ほかのサブタイプもありますが、ほとんどは中枢神経のシナプス前終末(神経伝達物質を分泌する側の軸索末端)に発現しています。自ら分泌した神経伝達物質を認識する自己受容体であるため、その量を調節するフィードバックに関与しています。神経終末のノルアドレナリン濃度が高すぎると、

α2刺激→Gi→AC活性低下→cAMP産生低下→チロシンからドパミンへの変換酵素チロシンヒドロキシラーゼ)活性低下→ノルアドレナリン産生低下→ノルアドレナリンがα1受容体に作用せず血圧低下



GABA B受容体も脳に広く分布している受容体ですが、Cl-イオンチャネルであるGABA A受容体とは異なり、Gタンパクを介して作用します。GABA神経のシナプス前終末もまた自己受容体であり、GABA濃度が高すぎると、

GABA B刺激→Gi→Ca2+チャネル抑制→GABAのエキソサイトーシス(分泌)を抑制



M2受容体は心筋に存在します。
Gi→K+チャネル開口→K+流出→心房筋過分極→活動電位が発生しにくくなる⇒心拍低下

抗コリン薬のアトロピンは、受容体遮断により心拍上昇させるため徐脈の治療薬として用いられます。

【Gq/11タンパク質共役型受容体】

アイ マイ ミー ハイ あたい たくじ キュートでしょ

アイ=α1受容体
マイ=M1受容体
ミー=M3受容体
ハイ=H1受容体
あたい=AT1受容体
たくじ=TXA2受容体
キュート=Gqタンパク

+@Gqタンパク質共役型受容体のシグナル伝達
キュート(Gq/11)なオカマのたくじは、ぷるぷるなくちびる(PLC)ホスホリパーゼCが欲しいイメージ。
PLCはPIP2(ホスファチジルイノシトール2リン酸)を分解します。
f:id:yashiki5296:20170119023908p:plain
図はPIP2を表していて、赤いはさみはPLCが切断する部位です。これによりジアシルグリセロール(DAG)と
イノシトール3リン酸(IP3)へ分解されます。
平滑筋においては、DAGはPKCを活性化させ、筋収縮。
IP3は筋小胞体からCa2+の遊離を促進、Caがカルモジュリンと結合して複合体を形成し、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンがリン酸化され、ミオシン軽鎖がアクチンをたぐり寄せ、その結果平滑筋の収縮が起こります。


平滑筋の収縮メカニズムについてはyakuzaishikensan.hatenablog.com

それぞれの受容体に作用する物質とその効果が結びつけられると実践的です。同じGqタンパクなのにα1は血管収縮で、M3は血管弛緩の理由
yakuzaishikensan.hatenablog.com

大幅減量ダイエット






眠気のメカニズムとカフェインの作用機序 ノウリアストの作用機序

仕事中や勉強中に眠気に襲われることがありますが、一体どのように眠気がきているのか、調べてみました。
薬剤師国家試験の脳の構造とも関与してきますので、それぞれの部位がどんな働きがあるのか知ると覚えやすくなった記憶があります。



【目次】

眠気のメカニズム

PGD2(プロスタグランジンD2)

アデノシン産生亢進

GABA神経活性化

ヒスタミン(覚醒作用)の放出抑制


脳のオリゴデンドロサイト(ニューロンの軸索を覆っているミエリン髄鞘を形成)から産生されたPGD2は、脳脊髄液に分泌され、前脳基底部のクモ膜に作用してアデノシン産生を増加させます。アデノシンは睡眠中枢のアデノシンA2A受容体を介してGABAニューロンを活性化します。抑制性の神経伝達物質であるGABAは覚醒中枢からのヒスタミン放出を抑制して、眠気が起こります。
ちなみに、外傷などで怪我したときにアラキドン酸からプロスタグランジンが産生されますが、風邪などの時に薬を飲んでいないのにボーッとして眠気を感じることがあるのはPGD2によるものだそうです。

覚醒系

f:id:yashiki5296:20170520203511p:plain

脳幹(中脳・橋・延髄)網様体賦活系は脳の覚醒状態を維持する系。覚醒状態では橋に存在する縫線核セロトニン神経系)と青班核ノルアドレナリン神経系)からの覚醒刺激が覚醒中枢(結節乳頭核)のヒスタミン作動性神経を活性化し、ヒスタミンを分泌して覚醒を維持する。

前庭器官からヒスタミンアセチルコリンが延髄に入力されている。
yakuzaishikensan.hatenablog.com

前庭器官では平衡や角加速度を感知するため、頭がカクンとするような寝落ちする時の動きで大脳へ刺激を送るため、覚醒に働く。

ちなみに、中枢への移行性がよいH1受容体拮抗薬は、覚醒作用のあるヒスタミンと拮抗して眠気を生じさせます。また、前庭器官からのヒスタミン入力に拮抗して乗り物酔いにも効きます。


睡眠系

睡眠状態に移行する時は、睡眠中枢である腹外側視索前野のGABA作動性神経からGABAが放出され、結節乳頭核のヒスタミン作動性神経系の働きを抑制して、覚醒状態を睡眠状態へとスイッチする。
f:id:yashiki5296:20170520203400p:plain


以上のことを考慮すると、レンドルミンやベルソムラを服用している患者さんに、新しくヒスタミンブロッカーが追加されたら覚醒系をほとんど抑制してしまいます。余程の睡眠障害の患者さんでなければ疑義したくなりますね。

カフェインの作用機序

カフェインはアデノシンと同じくプリン骨格を持っています。そのため、アデノシンがアデノシンA2A受容体へ結合するのを阻害してヒスタミンの遊離を抑制し、眠気を抑えます。

発生して蓄積してしまったアデノシンを分解する作用はないので、カフェインが切れたら眠気に襲われます。仮眠前にコーヒーを飲んでおくと、仮眠中にアデノシンを分解し、かつ受容体もブロックできるため頭がスッキリします。


喫煙でCYP1A2が誘導されるのは有名です。カフェインはCYP1A2によって代謝されるため、喫煙者は非喫煙者に比べカフェインが聞きにくくなっています。


イストラデフェリン(ノウリアスト)の作用機序

カフェインと似たような作用機序にイストラデフェリン(商品名ノウリアスト)があります。イストラデフェリンもプリン骨格を持ちます。

アデノシンA2A受容体は、大脳基底核線条体淡蒼球にまたがって存在する中型有棘ニューロン(GABAニューロン)に特異的に発現しています。線条体淡蒼球は無意識の運動(不随意)や筋肉の緊張に関与しています。

このニューロンドパミンやアデノシンによって活性を調節されています。

ドパミンが結合するとGABAニューロンが抑制され、GABA遊離が抑制されます。
アデノシンが結合するとGABAニューロンが興奮し、GABA遊離が促進されます。

パーキンソン病ではドパミン神経の脱落によりドパミンが不足しているので、相対的にアデノシンの作用が勝っています。
優位になったアデノシンの作用により中型有棘ニューロンが興奮し、投射先の淡蒼球ではGABAの遊離が促進された状態となり、錐体外路の伝達がGABAにより抑制されて運動症状(動きにくさなど)が出現します。

イストラデフェリンでA2A受容体を阻害すればアデノシンによるGABA遊離を抑制でき、運動症状を改善できます。
相対的な作用のバランスを改善する作用機序のため、レボドパと併用して、wearing-off時の症状改善に用いられます。
 www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/230124_1169016F1020_1_004_1F

イストラデフェリンで不眠は1〜5%程度出現するようです。





プリンペランとナウゼリンの違いと使い分け 制吐薬(吐き気止め)の作用機序

プリンペランナウゼリンの違いについて調べてみました。



【目次】

嘔吐の病態生理と各制吐薬のメカニズム

まずは嘔吐の生理的メカニズムを一緒に復習していきましょう。

f:id:yashiki5296:20161122222357p:plain

「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2011」より引用


嘔吐は延髄に存在する嘔吐中枢が刺激されることで起こります。
嘔吐中枢は血液脳関門に囲まれているため薬剤によって直接刺激されることは少なく、それぞれの経路から神経伝達されて刺激されます。
その経路は4つに分類されるようです。

①大脳皮質からの経路

脳血管の病変(梗塞や出血)による脳浮腫や、脳腫瘍による頭蓋内圧亢進などの物理的要因や、不安などの精神的要因が嘔吐中枢を刺激します。

②化学受容器引金帯からの経路

延髄の第四脳室底に存在する化学受容器引金帯(chemoreceptor trigger zone:CTZ)は同じ延髄に存在しますが、血液脳関門がなく様々な催吐性の刺激を受け、嘔吐中枢へと伝達します。オピオイド服用による嘔気などに該当します。ドパミンD2受容体やセロトニン5-HT3受容体、ニューロキニンNK1受容体が存在するためそれらの受容体拮抗薬が用いられます。


③前庭器からの経路

前庭では体の動きや内耳障害により刺激され、ムスカリンAchm受容体やヒスタミンH1受容体が関与したニューロンにより、嘔吐中枢を直接もしくはCTZを介して伝達します。中枢への移行性が第一世代の抗ヒスタミン薬が用いられます。第一世代は抗コリン作用も持っているため、乗り物酔いの予防や改善に適している。


④末梢からの経路

咽頭、心臓、腹膜など種々の臓器において機械的刺激により自律神経を介して嘔吐中枢へ伝達します。ドパミン刺激により消化管運動が抑制され、胃内容物が停滞し、消化管の伸展・機械的刺激が起こり嘔吐刺激が伝達されます。また、D2遮断薬で末梢でD2受容体を遮断することでアセチルコリンが遊離され消化管運動が亢進します。化学療法などで消化管粘膜障害が起こると、腸クロム親和性細胞からセロトニンが放出され自律神経を介して刺激が伝達されます。



プリンペランナウゼリンの違い

2剤の違いは血液脳関門の透過性の差にあります。
プリンペランは透過性が高いため上記の②CTZを介した中枢性、④末梢性嘔吐の両方へ作用します。
ナウゼリンは透過性が低いため④の末梢性嘔吐へ主に作用します。

次の場合における消化器機能異常(悪心・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感)//胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆のう・胆道疾患、腎炎、尿毒症、乳幼児嘔吐、薬剤(制癌剤・抗生物質・抗結核剤・麻酔剤)投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後。
X線検査時のバリウムの通過促進。

整形外科においてトラムセットが処方されますが、オピオイドによるCTZでのμ受容体刺激がドパミン遊離を促し、ドパミンD2受容体を介して嘔吐中枢を刺激するため、嘔気予防としてプリンペランが併用されます。中枢への移行性が悪いナウゼリンでは効きが悪いようです。


次の疾患および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気)//慢性胃炎胃下垂症、胃切除後症候群、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時

効能の違いを見ると、ナウゼリンにはレボドパ投与時の記載があります。
レボドパと言えばパーキンソン病治療薬ですが、その病態は脳内ドパミン量の低下が関与しており、そこにドパミンD2遮断のナウゼリンを投与すると病態が悪化しそうに感じます。しかしナウゼリン血液脳関門を通過せずパーキンソン病の重要な部位である黒質線条体への移行性が低いためレボドパによる消化管運動低下を改善し、嘔吐治療薬となりえているのでしょう。


一方でナウゼリンはn -オクタノール/pH7.4 緩衝溶液の分配係数が3.2と脂溶性が高いため、動物実験においてですが胎盤透過性の高さが懸念され、禁忌にも記載があります。

f:id:yashiki5296:20161123001328p:plain


プリンペランは中枢移行性が高いために黒質線条体ドパミンにも拮抗してしまい、錐体外路症状の副作用出現頻度がナウゼリンに比べ高くなっています。トラムセット服用開始から一週間程度でプリンペランの併用を中止するのは、トラムセットによる嘔気が収まってくるのと、プリンペランによる錐体外路症状の発現を予防するためのようです。


参考文献

・がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン2011
・各種インタビューフォーム
大幅減量ダイエット




薬剤師の転職

高血圧の薬(カルシウム拮抗薬)の作用機序と使い分け

高血圧治療に欠かせない薬剤であるカルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)。

循環器内科や腎臓内科、神経内科代謝内科で異なる種類の薬剤が出されますが、どんな特徴があるのか調べてみました。違いがわかると、患者さんにも説明しやすいです。

 

【目次】

 

 Ca拮抗薬の作用機序

チャネルからCa2+流入→筋小胞体からCa2+放出→カルモジュリンと結合→ミオシン軽鎖キナーゼ活性化→ミオシンとアクチンの滑り運動

 

 平滑筋は興奮が電位として伝わってくると、電位依存性Ca2+チャネルよりCa2+が流入し、その刺激により筋小胞体からさらにCa2+の放出が起こります。増加したCa2+はカルモジュリンと結合し、ミオシン軽鎖キナーゼを活性化し、ミオシンがアクチンと反応し、収縮が起こります。

 

そのほか、交感神経や副交感神経によっても調節を受けます。収縮(α1受容体→Gq/11タンパク質)や弛緩(M3受容体→Gq/11タンパク質)

yakuzaishikensan.hatenablog.com

yakuzaishikensan.hatenablog.com

 

収縮の最初のチャネルからのCa2+の流入を抑制し、血管平滑筋の収縮を抑制するのがCa拮抗薬です。これにより末梢抵抗が下がり、血圧が低下します。

 

Ca拮抗薬の血管選択性

生理学の復習になりますが、心筋や平滑筋は細胞に流入してきたCa2+が直接収縮へ関与しているのに対して、骨格筋は筋小胞体からのCa2+放出が主に収縮に関与しているため、Ca拮抗薬は主に平滑筋や心筋に働きやすく、骨格筋へ働きにくくなっています。

 

また、細胞膜電位の観点から見ると、作用部位である電位依存性カルシウムチャネルは電位によって3つの状態があり、

-90mVでは閉じている状態

-50mVでは不活性化状態

0mV以上では開いている状態

となっています。ジヒドロピリジン系は不活性化状態のカルシウムチャネルに親和性が高いため、静止膜電位が-60mVの平滑筋と、-90mVの心筋や骨格筋を比べると、-50mVに近く不活性化状態のチャネルが多い平滑筋に作用しやすいため血管選択性があります。

 

Ca2+チャネルの種類と局在

作用機序で述べたCaチャネルには主に3種類存在します。活性化した状態から不活性になるまでの時間で、

L型(Long-lasting:長い)

N型(Neutral:中間)

T型(Trasient:短い)

の3つに分けられます。

f:id:yashiki5296:20160622034044p:plain

L型を抑制すると輸入細動脈のみを拡張し、入口だけ広くなり出口が狭いために糸球体内圧を上げてしまい、腎臓に負担をかけてしまいます。

NやT型を抑制すると、輸出細動脈も拡張するため糸球体内圧を低下させ、腎保護に働きます。

 急激に血管拡張が行われると、圧受容器が血圧低下を感知して、血圧を維持するために代わりに心拍を増大させる反射性交感神経刺激が起こりますが、N型へ作用すればその反射を抑制して心臓への負担も少なくなります。

 

各Ca拮抗薬の特徴

f:id:yashiki5296:20160622044040p:plain

特徴をまとめました。降圧力は日経ドラッグインフォメーション2015年4月号を参照してます。

 循環器内科では冠攣縮性狭心症に適しているベニジピンやニフェジピンが用いられることが多いです。ベニジピンは脂溶性が高く、脳への移行性もよいことから神経内科でも出されることがあります。

糖尿病内科では合併症の腎症の発症や伸展予防のために腎保護作用のあるアゼルニジピンやシルニジピンが処方される傾向があるようです。

 

有機化学からの分析

ジヒドロピリジン

f:id:yashiki5296:20161207034542p:plain

f:id:yashiki5296:20161207035541p:plain

 

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/40208/1/YANAGISAWA-Teruyuki-01-09-0015.pdfより引用

各添付文書より構造をひっぱってきました。ニフェジピンよりも後に発売されたアムロジピンやアゼルニジピンを見てみると、親水性のアミノ基を導入したり疎水性のベンゼンを入れたりしています。細胞膜は両親媒性であるため、そうすることでより細胞膜への移行性を高めており、脂溶性が高いほど作用持続時間つまり半減期が長くなっています。半減期が長いということは作用発現時間(定常状態)も長いことに繋がります。

 

非ジヒドロピリジン

ジヒドロピリジン系(語尾に~ジピンと付くもの)は血管選択性が高い一方、

非ジヒドロピリジン系(ベラパミル、ジルチアゼム、ベプリジル)は心筋選択性が高く、陰性変力(心収縮力低下)、陰性変時(心拍数低下)作用を持つ。

 

・ベラパミルは陰性変力・変時ともに強いのが特徴で、心房細動などの上室性の頻脈性不整脈で使用される。

 ・ジルチアゼムは陰性変時作用が強い一方で陰性変力作用は弱いため心機能低下例でも比較的安全に用いることができる。冠攣縮や心房細動のレートコントロールへ使われる。 ベプリジルは抗不整脈

 

副作用

・下腿浮腫

Ca拮抗薬の作用部位であるのは平滑筋ですが、静脈と違い、動脈では平滑筋が発達しているため主に動脈へ作用します。末梢動脈が拡張しやすい一方で、末梢静脈は拡張しにくいため毛細血管の圧力が高まり、血液成分が漏れ出して足や手、瞼などに浮腫を生じることがあります。その副作用予防のためにも、末梢静脈も拡張させるARBとの併用が効果的で、合剤も発売されています。

 

・頭痛や頭重感・顔面紅潮・ほてり・動悸

血管拡張作用で過度に血圧が低下すると頭痛や頭重感・顔面紅潮・ほてりが生じます。また過度に血圧を下げることで反射性交感神経刺激により動悸が出現することもあります。

 

・徐脈

非ジヒドロピリジン系の場合には陰性変時・変力作用が働きすぎると心拍低下や心収縮力低下で心不全を呈することがあります。

 

参考文献

・村川裕二『循環器治療薬ファイル』メディカルサイエンスインターナショナル,2014

・日経DI 2015年4月号

・柳澤輝行,増宮晴子,渡邊春男『電位依存性 Ca2+チャネルの分子薬理学と Ca 拮抗薬の差異化』[新目でみる循環器病シリーズ 21]『循環器病の薬物療法メジカルビュー社、2006 年 1 月 1 日、pp188-199 

 

http://ir.library.tohoku.ac.jp/re/bitstream/10097/40208/1/YANAGISAWA-Teruyuki-01-09-0015.pdf