薬剤師の日々研鑽

薬剤師が基礎的な内容と薬の関連について書いています。内容に関しては最新の情報を参照ください。

薬剤師のスキルアップに使える書籍

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【目次】

病態を学ぶ

薬理学は病態生理学と密接に関係していますよね。禁忌などもそうです。

改訂総合2版 疾患別設問式 薬剤師に必要な患者ケアの知識

高血圧や脂質異常症気管支喘息などの重要かつコモンディジーズを取り上げ、病態・検査値・薬物治療を体系的に学べます。
問題形式なので、何がわかっていて、何がわかっていないかを明確にしやすいので力がつきやすいです。

薬剤師に必要な患者ケアの知識改訂総合2版 疾患別設問式 [ 木村健 ]

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病気と薬パーフェクトBOOK2012

物凄く分厚いですが、それも当然、薬理学、症候学、解剖学、生理学、病態・薬物治療学まで疾患ごとにまとめた一冊。
上の患者ケアを仕上げた後だとすんなり知識が入りやすい。
著者一覧も医師・薬剤師の教授陣の名が連なっており凄まじい。エビデンスも豊富に収載されています。
www.nanzando.com

薬物動態を学ぶ

薬剤師ならではの強みを活かすためには薬物動態だと思います。

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学 まちの薬局しごと集

薬局でも使える薬物動態を学べる一冊。大学の薬剤学が苦手な人でもとっつきやすくわかりやすい本です。
実際の症例を例示してくれているので、日常の業務にも活かしやすかったです。

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学 まちの薬局しごと集 (コミュニティ・ファーマシーシリーズ) [ 松澤忍 ]

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薬物動態を推理する55Question 一歩踏みこんだ疑義照会と服薬指導のために

上の薬局薬物動態学の監修をされていた菅野彊先生の著書。
この本で学ぶことで、ドクターへエビデンスと専門知識を持って処方提案したところ、信頼されて問い合わせが激増しました。

薬物動態を推理する55Question 一歩踏みこんだ疑義照会と服薬指導のために/菅野彊/小西廣己【2500円以上送料無料】

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糸球体濾過量(GFR)とクレアチニンクリアランスの違い

添付文書で頻繁に見かける糸球体濾過量(GFR:Glomerular filtration rate)やクレアチニンリアランス(CLcr)。
それらの違いや使い分けについて。
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ろ過・再吸収・分泌

f:id:yashiki5296:20170621115554p:plain
図のように、排泄される物質は、
糸球体でろ過され
尿細管で再吸収
尿細管で分泌
を受けます。


イヌリン

ろ過のみを受ける

クレアチニン

ろ過わずかに分泌を受ける

糸球体濾過量(GFR:Glomerular filtration rate)

単位時間あたり(1分間)に、糸球体からろ過された血漿量のこと。
これはつまり、どれくらいの血漿から薬物を排除できたか=クリアランスを表す。
結局、高校の生物で習った、原尿量と同じもの(原尿=糸球体でろ過された血漿)。



血漿から出ていった物質は尿中に排泄されるのだから、
[血漿中から消失した量]=[尿中へ排泄された量]


つまり、
血漿中濃度(mg/dl)×糸球体を通過した血漿量(ml)
=尿中濃度(mg/dl)×尿量(ml)


ここで、
原尿は糸球体でろ過された血漿のことなので、
ろ過しか受けていない血漿中濃度=原尿中濃度
また、糸球体を通過した血漿量=原尿量より

原尿量(ml)={\displaystyle\frac{尿中濃度(mg/dl)×尿量(ml)}{血漿中濃度(mg/dl)}}


なにかの物質に注目して、その尿中濃度と、尿量、血漿中濃度を測定すれば
原尿量つまり糸球体濾過量が産出できる。


一番糸球体濾過量を反映するのは、ろ過しか受けないイヌリンのクリアランス(Cin)。

f:id:yashiki5296:20170621122824p:plain

折田義正 イヌリンクリアランス測定法 モダンメディア 53 巻 2 号 2007 33-39 より引用

イヌリンの持続点滴、頻回な採血と採尿、そして拘束時間を考えると、実臨床で気軽に実施できるものではない。


イヌリンクリアランスに近似している指標

イヌリンクリアランスは最も確実に糸球体濾過量を測定できるが、煩雑で時間がかかる。
そのため簡便だが、真の糸球体濾過量を推定できる指標が求められた。
それがクレアチニンリアランスと推定糸球体濾過量(eGFR)。

クレアチニンリアランス

クレアチニンもイヌリンと同様に原尿量の式で、糸球体濾過量を算出できるが、24時間畜尿が必要となり、臨床に用いにくい。
CockcroftとGaultが18歳以上の成人を対象として推定式をつくった。
クレアチニンは、筋肉に含まれるクレアチン代謝物。
内因性であるためイヌリン持続点滴は不要。血清クレアチニンだけ測定すればいいので採血も1回。
Cockcroft-Gault式

eCLCr(mL/min)={\displaystyle\frac{(140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性)}{72×血清Cr(mg/dL)
}}
           

◆注意点
式を見るとわかるように、体重が分子にあるため、肥満の方では腎機能が高く算出されてしまう。
また、血清クレアチニンと体重が変動がないと仮定して、年齢だけ大きくしていくと、腎機能は1歳で1下がる計算になってしまう。
実際にはそんなに毎年下がっていかないので、高齢者ほど低く計算されてしまう。
クレアチニンはイヌリンと異なり、分泌もわずかに受けているため、20~30%高く算出されてしまう。0.789をかけて補正する必要あり。


推定糸球体濾過量(eGFR)

日本腎臓学会が、多くの患者のデータを用いて、診断に用いるために作成した推算式。
尿量、ひいては循環血漿量は体表面積に比例するので、
小柄な人ではそもそもろ過すべき血漿量つまり糸球体濾過量も少ない。
そのため、単位が1.73m^2で補正してある。


eGFR(mL/min/1.73m2)=194×Cr^-1.094×Age^-0.287×0.739(女性)


◆注意点
投与設計時には体表面積補正を外す。
小柄で筋肉量が少ないような高齢者では高めに算出されてしまう。

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参考文献

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009 日本腎臓学会
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薬剤師が知っておくべき、肝臓の検査値とその意義

薬局だとカルテは見れないために、主な情報源が患者さんになってしまいます。
疾患名も治療方針も患者さんから聞くことはできても、又聞きなので伝言ゲームのように正確性に欠けます。
だからこそ、患者さんの話をよく聞いて、持参してくださった検査値をしっかり見て、薬物治療上の問題がないか確認する必要が高いと思っています。
ここには生理学と生化学が絡んできます。



【目次】

肝臓の役割(生理学)

肝臓の役割をわかっておくと、検査値を理解する上で役に立ちます。
矢印は、肝機能が低下した時に出現する事象。

毒や薬物の分解・代謝

アミノ酸の分解
  ⇒芳香族アミノ酸の蓄積 
アンモニアオルニチン回路
  ⇒高アンモニア血症
薬物代謝(酸化・還元や抱合)
  ⇒薬物血中濃度上昇
ホルモン分解
  ⇒女性ホルモン濃度上昇

ビタミンD(コレカルシフェロール)の活性化
  ⇒低カルシウム血症や骨軟化症
ビリルビンをグルクロン酸抱合して排泄を補助
  ⇒黄疸

栄養素の貯蔵

過剰なグルコースをグリコーゲンとして貯蔵
  ⇒低血糖
過剰な脂肪酸中性脂肪として貯蔵
  ⇒脂肪肝

食事ができない場合にはそれらを分解してエネルギーを取り出します。

物質の合成

凝固因子やアルブミンなどのタンパク質
  ⇒出血傾向や浮腫
コレステロール
  ⇒総コレステロール値低下
胆汁酸
  ⇒脂溶性栄養素の吸収不良


※ちなみに、胆汁酸とコレカルシフェロールの原料はコレステロールです。「コレ」の意味は胆汁。



検査値(生化学・病態)

日常的に検査されて、薬局でもよく目にする項目のみです。

AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

基準値:13~33U/L
局在:心筋・肝臓・骨格筋・赤血球・腎臓・ミトコンドリアほぼ全身に分布
肝臓含有量:約140(酵素活性U/g湿重量)
半減期:およそ12時間
役割
アスパラギン酸のアミノ基を、TCA回路の構成要素でもあるαーケトグルタル酸へ転移させる。その結果、アスパラギン酸はオキサロ酢酸へ、αーケトグルタル酸はグルタミン酸へ変化する。
逆反応も触媒する。

オルニチン回路との繋がり

バリン・ロイシン・イソロイソンなどの分岐鎖アミノ酸は、骨格筋でも分解されるが、アミノ酸からアミノ基を外すとアンモニアとなって細胞毒性を示してしまう。
その毒性を発揮させないためにアミノ基をαーケトグルタル酸に転移してグルタミン酸に変えている。グルタミン酸は肝臓に運ばれて、ミトコンドリアASTによってアミノ基をオキサロ酢酸に渡してアスパラギン酸へ変える。
そうすることでオルニチン回路に取り込まれてアンモニア尿素へ変化させる。


ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

基準値:8~42U/L
局在:肝臓>腎臓
  ⇒肝特異的
肝臓含有量:約44(酵素活性U/g湿重量)
半減期:およそ50時間
役割
ラニンのアミノ基を、TCA回路の構成要素であるαーケトグルタル酸へ転移させる。その結果、アラニンはピルビン酸へ、αーケトグルタル酸はグルタミン酸へ変化する。


糖新生との関わり

糖新生とは、アミノ酸や乳酸などの材料からグルコースを作る過程。
ラニンをピルビン酸に変化させることで糖新生の経路に乗せている。


LDH(乳酸脱水素酵素

基準値:200~400U/L
局在:LD1とLD2   ⇒心臓、腎臓、赤血球
   LD3とLD4とLD5⇒肝臓、骨格筋
半減期:LD1(79時間)
    LD2(75時間)
    LD3(31時間)
    LD4(15時間)
    LD5(9時間)
役割解糖系の最終段階で、酸素が足りない条件でピルビン酸を乳酸へ酸化する。
   同時にNADをNADHへ還元する。
   逆反応も触媒する。

心筋梗塞や溶血との繋がり

LD1、2は主に心臓に分布し、半減期も長いため心筋梗塞で上昇する。
また、赤血球にも含まれるため溶血でも上昇する。

これらを組み合わせて判断できること

まずはASTとALTの違いを整理
・肝臓への局在 AST<ALT      
・肝臓の含有量 AST>ALT
半減期    AST<ALT

急性肝炎

細胞障害の度合いが大きいため、含有量の多いASTが多く血中に遊離する。
AST/ALTは大きくなる。

慢性肝炎・脂肪肝

細胞障害の度合いは小さいため、半減期の長いALTが多く血中に遊離する。
AST/ALTは小さくなる。

肝硬変

線維化していない正常な細胞が少なくなっているため、AST・ALTとも低下する。
細胞数が少ないために、含有量の少ないALTの血中への遊離も低下する。
AST/ALTは大きくなる。

心筋梗塞や溶血

心臓に局在をもつASTが多く血中に遊離する。
AST/ALTが大きくなる。
併せて、LDHも上昇している。


薬物代謝能の推定

上記の検査値はいずれも細胞からの逸脱酵素で、その細胞の障害度合いを表すものだった。
しかし障害の度合いが必ずしも薬物の代謝能と一致しているわけではない。


慢性肝炎の患者には薬局でも遭遇率が高い。
薬剤師として、どれくらいの代謝能が残っているのか予測できれば、処方の助けになる。


慢性肝炎を引き起こしているC型肝炎ウイルスが病勢が激しい際にはγーグロブリン(抗体)が多く産生されるため、
アルブミン/グロブリン比(A/G比)が低下している。

急性肝障害モデルの肝臓では、CYP各分子種間でmRNA発現量の低下率と酵素活性低下率との間に高い相関性を認めたが、慢性肝障害モデルでは必ずしも一致するものではなく、一定の相関関係を見出すことはできなかった。
しかし、CYP各分子種の酵素活性低下率と同時に測定した血液生化学検査値との相関関係を見たところ、急性肝障害モデルでは、血清トランスアミアーゼ活性(AST値)の間に、
また、慢性肝障害モデルでは、血清albumin値の間に高い相関関係を認めた。

真野泰成 肝障害時における薬物投与設計法の開発 
博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査結果の要旨/金
沢大学大学院自然科学研究科, 平成19年3月: 367-371  より引用

ラットのデータではあるが、急性肝障害モデルでは、ASTが高いほど薬物代謝酵素CYPの酵素活性が低くなっている。
一方で、慢性肝障害モデルでは、血中アルブミン濃度が低いほど酵素活性が低くなっている。

※ヒトでは、慢性肝炎ではアルブミン濃度は比較的保たれるため、慢性肝障害モデルをヒトで考えると、肝硬変に相当する。

Child Pugh分類

最近では、添付文書に肝障害の度合いを表すChild Pugh分類に合わせた投与量が記載される薬剤が増えてきました。

f:id:yashiki5296:20170621030724p:plain
軽度 :5~6
中等度:7~9
重度 :10~15

代謝型か腎排泄型かを見極めて、投与量調節をチェック・提案
yakuzaishikensan.hatenablog.com

肝代謝型と腎排泄型薬剤の判断

薬剤師として知っておくべき、投与される薬剤が肝代謝型なのか腎排泄型なのかの判断。


【目次】

分配係数(脂溶性か水溶性か)

参考程度ですが、薬剤が脂溶性なのか、水溶性なのかでもおおよその判断ができます。
脂溶性が高いと血管壁を容易に通過して細胞内へ入っていきやすい薬剤。脂溶性ビタミンと同じで蓄積しやすいということ。
そこで体はそれを排泄するために肝臓で、ヒドロキシ基などの官能基を導入したり、グルタチオンや硫酸などで抱合して、極性を上げることで体外に排泄しやすくする。



n-オクタノール/水分配係数を参照する。(インタビューフォームに記載。)
シンプルに油/水のどちらに溶けやすいか、性質を表す。
・1より大きいなら脂溶性
・1より小さいなら水溶性

対数logをとった、logPで記載されている場合もある。
その場合には、log関数のグラフを思い出しながら、
分配係数Pが1より大きいならlogPは正の値
分配係数Pが1より小さいならlogPは負の値

ちなみに、核内受容体と結合してCYPなどの薬物代謝酵素を誘導する薬剤は脂溶性傾向にある。

f:id:yashiki5296:20170615212149p:plain

テグレトール インタビューフォームより引用

※脂溶性であることと、肝代謝型であることはある程度相関しますが、完全に一致はしないので、参考程度に。

尿中未変化体排泄率(排泄での腎臓の寄与の割合)

体循環に入った薬のうち、代謝されずに未変化体のまま尿中に排泄される割合。

・0.7以上なら腎排泄型
・0.3以下なら肝代謝
中間のものは肝・腎両方が関与

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クラビット錠 添付文書より引用

バイオアベイラビリティを考慮する!

fu=未変化体排泄量/(バイオアベイラビリティ×投与量)

練習のために、上のクラビット錠の添付文書を見ると、
「5.の点滴静注との比較」から、バイオアベイラビリティ=経口AUC/静注AUC=50.86/51.96=0.98とわかる。
「4.排泄」から、尿中未変化体排泄率=500mg×0.8376/500mg×0.98=0.85
0.7以上より、腎排泄型と判断できる。

裏付けとして、「6.腎機能障害患者での体内動態」で、クレアチニンリアランスが20未満では半減期が延び、AUCが増大し、尿中未変化体排泄率が低下している。


活性代謝物を考慮

また、代謝物に活性がある場合、未変化体だけでなくその活性代謝物の尿中未変化体排泄率を考慮する必要があります。
yakuzaishikensan.hatenablog.com




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参考文献

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アルコール(飲酒)と血糖値

飲酒によって血糖値はどうなるのか、生化学の観点から捉え直します。糖尿病にも密接に関わってきます。


【目次】

アルコールの代謝

アルコールは、10%は呼気中に排泄され、残りの90%は肝臓で分解されます。

高校化学でもあったように、
アルコール→アセトアルデヒド→酢酸
の順に酸化されて分解されていきます。
この酸化に関与するのが、脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)です。アルコールを脱水素する酵素は、そのままアルコールデヒドロゲナーゼアセトアルデヒドを脱水素する酵素アルデヒドヒドロゲナーゼ(他のアルデヒドも分解するため、アセトは省略)。

水素を引っこ抜くため、引っこ抜かれた水素を受け取る物質が必要となります(補酵素)。それがニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD)。NADが水素を受け取ってNADHになります(還元)。

以上のことから、アルコールを分解するにはNADがNADHに還元されることが必要です。

糖新生との関わり

一方で、NAD糖新生にも関わってきます。
糖新生は、体内の乳酸やアミノ酸などからグルコースを作り出して血糖値を上昇させる機構です。

その途中過程で、
リンゴ酸→オキサロ酢酸
乳酸→ピルビン酸
の反応にNADが必要となります。


アルコールを多量に摂取すると、その分解のために多量のNADが消費されます。そうすると糖新生に必要なNADが賄えないために糖新生の反応が抑制されます。そのため空腹時に多量飲酒すると、グルコースが供給されずに低血糖のリスクが高まります。

糖尿病治療で、インスリンやインスリン分泌促進薬を使用している方では、その作用により血液中のグルコース濃度は下がります。そこに多量飲酒が加わるとグルコース供給が低下するために低血糖リスクが高くなります。

どの程度の量なら低血糖になりにくいのか?

これに関する文献を見つけました。
Hirst JA, et al. Diabet Med. 2017.
www.ncbi.nlm.nih.gov


2型糖尿病患者が16〜80gのアルコールを摂取した0.5時間後、2時間後、4時間後、24時間後の血糖値は、飲まなかった人と差がなかった。

2型糖尿病患者が1日あたり11〜18gのアルコール摂取を4〜104週間継続しても、血糖値とHbA1cの項目において、飲まなかった人との差がなかった。


ちなみに、アルコールを20gとかで表してますが、飲酒量と度数と密度から計算されるものです。
例えばビール
500ml(飲酒量ml)×5%(度数)×0.8(質量g/体積ml)
=20g

このデータは2型糖尿病のみに該当するデータで、日本人対象ではないので、体格やアルコールデヒドロゲナーゼアルデヒドヒドロゲナーゼ活性に違いが出てくるため、そのまま応用することはできなさそうですが、出てくる数字以上の飲酒では上記のメカニズムから低血糖リスクが高まりそうです。



APTX4869の作用機序

名探偵コナンに出てくる、APTX4869の作用機序を考察してみました。


【目次】

APTX4869の作用機序

アポトーシスを誘導するとともに、テロメラーゼ活性によって細胞の増殖能力を高める。
アポトーシスとテロメラーゼ活性、それぞれについて考えていきます。

アポトーシスとは

生理的に不要になった細胞や、病理的な原因によって障害された細胞を除去する仕組み。
オタマジャクシがカエルになる際に不要になる尾の除去や、ウイルスや病原体に感染した細胞の除去、がん細胞の除去、自己の細胞に反応する免疫細胞の除去などに関わり、形態形成や生体防御に重要な役割をもつ。

おおまかな流れ

細胞の縮小⇒核クロマチンの凝縮⇒DNA断片化⇒細胞断片化(アポトーシス小体)⇒マクロファージによって貪食
細胞膜は破裂せず細胞の内容物が流出しないため炎症は起こらない
短時間で起こる(2~3時間)

分子レベルの流れ

内因性経路と外因性経路がある。いずれもざっくりと。

・内因性経路
抗がん剤治療放射線治療、増殖因子がなくなる
ミトコンドリアからシトクロムCが流出
⇒カスパーゼ9の活性化
⇒カスパーゼ3の活性化
⇒DNA分解酵素の活性化
⇒DNA断片化

・外因性経路
TNF-αやFasリガンドによる刺激
⇒それぞれの受容体を介してカスパーゼ8の活性化
⇒カスパーゼ3の活性化
⇒DNA分解酵素の活性化
⇒DNA断片化

f:id:yashiki5296:20170522170800p:plain

Exp Oncol. 2012 Oct;34(3):200-11.より引用

アポトーシスとAPTX4869

子供と大人の体の大きさの違いは、細胞数によるものだそうです。
少し前ですが、成人の細胞数が60兆個ではなく、37兆2000億個と報告されました(Ann Hum Biol. 2013 Nov-Dec;40(6):463-71)。
コナン君は小学1年生です。厚生労働省のHPより、小学1年生(7歳)の平均体重はおよそ23kg。単純に体重で比例計算すると、14兆2600億個となります。
アポトーシスを誘導することで、細胞数を減らし、小児の体格に戻ることはできそうです。

しかし、アポトーシスでは炎症は起こらないため、発熱が説明できません。しかもアポトーシスにはエネルギーが必要なため、むしろ吸熱反応で体温が下がるような気もします。約23兆個もの細胞を除去するためにはよほどの熱が奪われることでしょう。

…もしかするとAPTX4869を飲まされた人たちは、熱が奪われることによって生命活動が維持できなくなり、死亡するのでしょうか。
死なずに済んだコナン君や灰原さんはAPTX4869の代謝に関わる酵素に変異でもあるのか?

大量の細胞をアポトーシスさせたら、その分だけマクロファージなどの貪食細胞が処理しなければならない。また、カリウムも処理出来なければ高カリウム血症で心室細動を起こして死んでしまう。

テロメアとテロメラーゼ

テロメア:染色体の末端が分解されたり、傷害されるのを防ぐ繰り返しの配列(TTAGGG)



DNAを複製する時には、DNAポリメラーゼを使いますが、DNAポリメラーゼは5f:id:yashiki5296:20170522183827p:plain’→3’方向にしか合成できず、
しかも合成開始にはRNAプライマーが必要です。複製の進行方向に対して5’→3’方向になっている、図の上側の鎖(リーディング鎖を鋳型にした新生鎖)は合成に問題ありません。


f:id:yashiki5296:20170522183338p:plain
しかし下側の鎖(ラギング鎖を鋳型にした新生鎖)は進行方向に対して3’→5’方向と逆方向に進ませるため、複製を少し進むごとにRNAプライマーを使わなければなりません。



f:id:yashiki5296:20170522183749p:plain
最終的に出来上がったDNAにRNAプライマーが残っていてはDNAにならないので除去します。このときラギング鎖は断片となったDNAをDNAリガーゼで結合させます。しかしいずれの鎖も5’末端はRNAプライマーが削除されると、もうポリメラーゼは働けないでその分だけ短くなります。

複製するごとにテロメアが短くなっていき、ある一定の長さになると、染色体を保護する能力が落ち、変異が起こりやすくなるため、細胞は50回ほど複製して細胞分裂すると、それ以上増殖しないようになります(ヘイフリック限界)。

しかし受精卵が赤ん坊になるまでにたったそれだけで分裂が停止してしまうと困るので、生殖細胞や幹細胞にはテロメアを長くするテロメラーゼという酵素活性が高い状態になっています。他にも、がん細胞もテロメラーゼ活性が高く、増殖能力が高く保持されています。

テロメラーゼ活性とAPTX4869 iPS細胞化させている?

APTX4869はテロメラーゼ活性があるとのことですが、テロメラーゼの伸長反応を促進するのでしょうか。
テロメラーゼを活性化すればテロメラーゼが伸長するため細胞分裂回数の制限は外れます。

ちなみに、テロメアが短縮して細胞が分裂できなくなることを細胞老化といいますが、個体の老化(白髪やしわが増えたりなどのエイジング)と同じではありません。

上記のアポトーシスで細胞数を減らして子供の体格には戻れますが、アポトーシスされなかった細胞は17歳のままです。
肌とか年齢が出やすい部分は小学1年生との差が顕著になりそう。


山中教授の人工多能性幹細胞(iPS細胞)のように、体細胞を初期化(リプログラミング)して幹細胞化するのであれば、漫画の通りテロメラーゼ活性は上がります。若返りは可能かもしれないけど、それだと小学1年生で止まらずに赤ん坊まで戻りそうです。

製剤学的・分子生物学的に考えられること

ジンから口にAPTX4869を入れられて1時間も経たないうちに作用が発現している。
→一般的に表面積が広く、膜透過性の良い小腸から薬剤が吸収されるが、口から小腸に到達するまでに30分(空腹時)〜2時間(食後)はかかってしまう。あれだけ早く薬効が出ていたということは、舌下投与で口腔粘膜から吸収されたのではないか。これなら1〜2分で効果が発現する上に、全身循環に乗って全身の細胞に作用する。


→仮に舌下投与だとすると、吸収過程は受動拡散に依存するからAPTX4869は脂溶性薬物だろう。舌下から全身循環に乗るために初回通過効果も回避できる。

→脂溶性薬物ならば細胞膜を通過するため、アポトーシスは内因性経路か。そしてアポトーシスを誘導しない細胞には核内移行して転写因子として働いたりするとiPS細胞のように若返りが説明できる。




COX-2選択的阻害薬と心筋梗塞リスク

高齢者などで日常的によく用いられるCOX2選択的阻害薬。そのリスクとは?


【目次】

COXの阻害による影響

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COX選択性がない場合、常時発現しているCOX-1を阻害することにより胃障害・腎障害の副作用が出る。
COX-2選択的阻害薬はCOX-1を阻害しにくいために上記の副作用頻度が少なく、長期間服用する必要のある整形外科などで頻用される。
しかしCOX-2阻害により、血管拡張や抗血小板作用を持つPGI2産生が抑制される一方、
COX-1を阻害しないため血管収縮や血小板凝集作用を持つTXA2が産生され、心筋梗塞などの心血管イベントリスクが高くなると考えられている。

エビデンス

カナダとヨーロッパの医療データベースから44万6763人分の患者データを用いたメタアナリシス。
Risk of acute myocardial infarction with NSAIDs in real world use: bayesian meta-analysis of individual patient data. - PubMed - NCBI

P:50代後半以降のCOX-2阻害薬を服用している高齢の患者
E:セレコキシブ・rofecoxibなどのCOX-2選択的阻害薬、ジクロフェナク・イブプロフェン・ナプロキセンなどのCOX非選択的阻害薬の投与
C:NSAIDs非使用者や上記各群間で比べて
O:全てのNSAIDsは心筋梗塞発症リスクを増大させた。セレコキシブによる心筋梗塞リスクは、これまでのCOX非選択的阻害薬と同等で、rofecoxibより低かった。
 使用開始後1か月間が最もリスクが高く、用量依存的にリスクは高くなった。

f:id:yashiki5296:20170522152451p:plain

Bally M, et al. BMJ. 2017.より引用
www.ncbi.nlm.nih.gov


投与量とリスク

8~30日間(1か月未満)の連日投与では、
セレコキシブ:200mg以上
ジクロフェナク:100mg以上
イブプロフェン:1200mg以上
ナプロキセン:750mg以上
でリスクが高い。

≪日本での上限量≫
セレコキシブ:400mg
ジクロフェナク:100mg
イブプロフェン:600mg
ナプロキセン:600mg

投与期間とリスク

いずれのNSAIDsも7日間以内でリスクが高い。
8~30日間では上記の通り用量依存的で、最もリスクが高い。
30日以上ではリスクの傾向は薬剤ごとに異なる様子。


COX-2選択的阻害薬の方がリスクが高いと思っていたが、イブプロフェンやジクロフェナクなどの従来の非選択的阻害薬と同等なのは意外だった。
いずれのNSAIDsでもリスクがあるため、心筋梗塞既往の方には避けるのが望ましい。
しかし、それでも使わなければならない場面では、投与開始1週間から4週間は注意しておくべきか。